糖尿病ってどんな病気?
糖尿病は、日常生活での過食や運動不足がもたらす生活習慣病です。糖尿病が怖いのは、初期には自覚症状が乏しく、知らぬ間に合併症を引き起こすことです。もう一つの怖い点は、血糖値を悪いままにしておくと血糖値が上がりやすい体質がどんどん育ってしまい、血糖値がなかなか下がらないという悪循環に陥ってしまうことです。したがって糖尿病は、早い段階できちんと血糖値をコントロールすることがとても大切です。
全国にどのくらい患者さんがいるの?
わが国の糖尿病患者数は、世界各国の中で第5位です。患者数1位の中国、2位のインドと比べて人口比では数が多く、国民6人に1人の割合です。したがって日本人は、糖尿病にかかりやすい民族であると考えられています。しかも日本の糖尿病患者数は年々増加しており、現在、わが国の糖尿病人口は1000万人を超えていると推定されています。
わが国で糖尿病が強く疑われている方は約950万人、糖尿病の可能性が否定できない人は約1100万人と推定されます。ところが実際に治療を受けている方の数は約400万人(45%程度)で、半数以上の方は糖尿病であることに気付いていないか、あるいは気付いていても治療をしていないのが実情です。
なぜ糖尿病になるの?
過食や食事の欧米化(高カロリー食・高脂肪食)と運動不足が挙げられます。実際、脂肪摂取が多くなるほど、また車の保有台数が増えるほど、糖尿病が増加する相関関係が認められています。
加齢 | 高齢になるほど体全体の機能が低下し、膵臓の働きも弱くなります。 |
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家族歴 | 遺伝的要素によるインスリンの分泌が少ない体質。 |
肥満・食べ過ぎ | 過食・肥満は、インスリンの働きが追いつかなくなります。 |
運動不足 | 体を動かさなければ太ってしまい、インスリンの働きが悪くなります。 |
ストレス | 人間の体はストレス反応として、副腎皮質ホルモンやアドレナリンを分泌し、
これらのホルモンはインスリンの働きを妨げ、血糖を上昇させる作用があります。 |
その他 | 副腎皮質ホルモンなどの特定の薬の服用が糖尿病を誘発したりする場合があります。 |
糖尿病の症状、初期症状は?
初期の糖尿病には、基本ほとんど自覚症状がありません。なぜこのような初期には目に見えて症状が表れてこないものを病気と診断しているかというと、高い血糖値を放置していると将来的にいろいろな合併症を引き起こしてしまい、しかも一度起こった合併症は元に戻すことがなかなか難しいからです。血糖値が基準値を越えたら糖尿病と診断し、先々に合併症の問題で困らないようにしているわけです。ですから血糖値が少しでも高目になってきたら、早めにきちんと相談することが重要です。
下記の症状を認めた際には、特に注意が必要ですので、至急ご相談ください。
- 口が渇く
- 尿の量・回数が多い
- 尿のにおいが気になる(甘いにおい)
- 目がかすむ、視力が落ちた
- 疲れやすい、体がだるい
- 太っていた人が急に体重が減少する
糖尿病のタイプ(1型糖尿病、2型糖尿病について)
糖尿病は、4種類に分類されます。(日本糖尿病学会による糖尿病の分類)。
わが国の糖尿病患者さんの 90%以上は2型糖尿病 です。
1型糖尿病 | 膵臓の細胞が破壊されて、インスリンを分泌することができなくなり発症します。お子さんや若い人に多い。 |
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2型糖尿病 | 体内でのインスリンの働きが悪くなったり、膵臓から十分な量のインスリンを分泌することができなくなったりして発症します。成人してから発症することが多い。 |
その他の特定の
機序疾患によるもの |
遺伝子異常、膵臓・肝臓などの病気、感染症などが原因で発症します。 |
妊娠糖尿病 | 妊娠中にはじめて見つかり、しかし糖尿病にいたっていない糖代謝異常を、
妊娠糖尿病といいます。 |
放置するとどうなるの?(合併症が起きる?)
なぜ糖尿病を治療しなければならないのでしょうか、それは健康診断の数値が悪いからだけではありません。多くの場合、血糖値が高いことで症状をきたすことはあまりありませんから、高血糖を指摘されても毎日の生活は問題なく過ごせてしまうことも多いです。しかし「今は元気だから」と放っておくと、糖尿病はどんどん進行して、合併症と呼ばれるいろいろと困った問題を先々に引き起こしてしまうことがあります。
日本では糖尿病の合併症により、人工透析を始める方が年間1万人以上、失明する方が3千人以上、他にも動脈硬化を進行させて心筋梗塞や脳卒中などの命に係わる病気によって寿命が約10年短くなるとも言われます。したがって、糖尿病は単に血糖値が高くなる病気と捉えるのは危険で、今は困っていないからと様子をみてしまうことは要注意です。
また、ずっと糖尿病を放置しておくと、血糖値を下げるインスリンがご自身の膵臓からだんだん出なくなってしまい、そうなってから食事を頑張ってもなかなか血糖値は良くなりませんし、治療法も限られた中から選択しなければならなくなります。合併症でのお体の不調も、出なくなってしまったインスリンも、今の医学ではなかなか元通りにすることは難しく、糖尿病は「早い段階で」「継続的に」「正しく」取り組んでいくことが大切です。
健康診断などで血糖値の異常を指摘されたら、症状がないからと様子を見ずに、早めにきちんと受診されることをお勧めします。これまで何年も放っておいた方でも遅すぎるということはありませんので、まずは一度ご相談ください。
血糖値が高い状態が続くとどうなるの?
糖尿病はほとんどの場合、自覚症状を感じることなく進行し、徐々に合併症を引き起こします。糖尿病の合併症は日常生活に影響を与えるものが多く、合併症が出現すると不自由な生活を余議なくされることも稀ではありません。糖尿病には、神経障害・網膜症・腎症という三つの特徴的な合併症があります。日本では、壊疽による切断、成人失明、人工透析の原因の大きな比率を糖尿病が占めます。
しかし糖尿病になると、誰でも必ず合併症が起こるわけではありません。これらの合併症が進んでしまう方は、そのほとんどが治療中断または糖尿病を放置していた方々です。定期的通院を欠かさず、HbA1cを7.0%未満に維持できれば、合併症の発症および進行はしっかり防げます。糖尿病は、ご自身で元気なお体を守ることが期待できるご病気ですので、ぜひ一緒に頑張っていきましょう。
糖尿病性神経障害 | 比較的早くから現れ、足のしびれ・痛み・つり・冷え・ほてり・立ちくらみ
などの症状を呈します。悪化すると感覚が消失し、壊疽や切断にいたること あります。 |
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糖尿病性網膜症 | 目の奥が出血したりして、進行すると失明します。糖尿病発症から約15年で
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糖尿病性腎症 | 尿を作る腎臓の働きが悪くなり、体がむくみ、毒素が体にたまるようになります(腎不全)。腎不全が進行すると人工透析が必要になります。 |
動脈硬化症 | 脳や心臓の動脈がつまると、脳卒中や心筋梗塞を引き起こし、命に関わることになります。 |
糖尿病をコントロールできる?
糖尿病は、病名に「病」と付いてはいますが、一種の血糖値が上がりやすい体質なのです。体質なので、血糖値が上がりやすいことは残念ながら治りませんが、その体質と上手に向かい合うことで、お体の不調を起こさないようにコントロールすることは可能です。たとえ糖尿病を発症したとしても、食事や運動などの生活習慣を見直し、必要に応じ薬物療法を適切に行って上手に付き合っていけば、合併症の発症や進行を抑制でき、健康な人と変わらない人生をおくること、普通の人と変わらない寿命の確保も難しくありません。
テレビやニュースで様々な予防法や治療法が日々紹介されていますが、全ての人がそれを実践することで血糖値を改善できるとは限りません。これが糖尿病の難しいところで、お一人お一人に合ったオーダーメイドの治療法を見出すことが重要となります。そのためにも現在のご自身の状態をしっかりと把握し、状態に応じた適切な治療を受けることが大切です。今から将来を見据えてきちんと糖尿病と正面から向き合って治療することは、怖い合併症を予防し、何十年先の未来のご自身を守ることへとつながっていきます。時には投げ出したくなる時もあるでしょうが、それは人間なら当たり前の気持ちです。しかしお一人で悩むことはありません。医師はもちろん、看護士・管理栄養士など、スタッフ全員で皆さんのお悩みの解決を目指し、前向きな気持ちで治療が継続して行えるよう、当院ではお手伝いをさせていただきます。